太陽光発電システムからのノイズ対策

ここでは、アマチュア無線を初め、各種無線設備に障害を与えるパワーコンディショナーからのノイズ問題と現状、そして対策のノウハウをまとめています。

今まではBlogに掲載したり、雑誌への寄稿、アマチュア無線家と個別相談に乗っていましたが、急速に相談が増えたため、情報をまとめて対策のノウハウを基本的な部分のみになりますが公開してます。
基本的な部分のみとお断りしているのは、ノイズ対策は環境条件に大きく左右されるため定番というモノが存在しないためです。

ここに書かれた対策は多くのノウハウと共に使用されて効果を発揮します。ゆえに、これをやったからといって直るとは言えませんのでご注意ください。

法律との関係

まず最初に書いておかなくてはならない事があります。日本における法律の話です。
一言で言ってしまえば、今の日本にはノイズ妨害を法的に規制する根拠はありません。
すなわち、極端な話ですが、法律のみで解釈すると隣の家にソーラーシステムが設置されてアマチュア無線やラジオがノイズだらけになってしまっても、最悪は泣き寝入りするしか無いのです。
ここで紹介する対策は基本的にメーカーが行うのですが、メーカーの立場としては、法律の下に製造された機器を使って施工されたものに対して、「設備は合法の範囲ではあるが、ノイズの問題を紳士的に解決してあげる」と、いうスタンスになります。善意でやってくれているようなものです。あくまでも法律のみを考えた場合ですが。

日本の電波法は、積極的に電波を出す機器(送信機や高周波利用設備)に対しての法律であり、それ以外の不要輻射(ノイズ)に関しては電気用品安全法(電安法)で規定されている物だけになります。
電安法はPSEやVCCIが相当します。PSEは法律ですが、VCCIは業界自主規制(紳士協定)です。

日本における法規制の範囲

パワコンは電源装置というカテゴリーになります。
電源装置は電安法で規制されていますが、その範囲は簡単に簡単に書くと以下の2つに分かれます。

  • 30MHz以上1GHz以下
    自主規制をしていてもVCCIの範囲になります。
    法的な規制はありません。
  • 30MHz以下
    電安法の端子雑音電圧の規制(法律)があります。
    しかし、これは機器の接続端子部分でのノイズレベルを規定したもので、同一電源線路に接続されている他の機器に悪影響を与えない事が目的で数値もかなり甘い物です。
    端子に接続されたケーブルから輻射されるノイズレベルに対しては制限値がありません。

日本を含めた各国のノイズ規制の一覧(CISPRの勧告)

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JET認証とは
アマチュア無線で言えば、技適(TELEC)や保証認定(TSS)と同じです。
電安法(PSE)に基づく検査を行って、法規に合致していることを保証して認定する機関。

ここでのポイントは、アメリカ合衆国(FCC)や欧州連合(CE)ではノイズの放射電界強度 の限度が数値化され法規制されているのに対し、日本は放射電界強度の規定が無く、しかも法規制されていないことが問題です。乱暴な言い方をすると、ノイズは出し放題です。

また、日本以外での法規制であっても、アマチュア無線を含む無線通信に対する規制レベルとしては十分なマージンがあるとは言えず、規制限界値では微弱な信号に耳を澄ませて行うような海外との交信ができるレベルではありません。
放送局は強大な電波をだしていますし、業務無線は特定業務の通信を安定して行えるように設計するので、アマチュア無線とは性格が全く異なります。

世界におけるノイズ規制の動きと日本の動き

IECの分科会にCISPR(国際無線障害特別委員会)というのがあります。
ここに各国が参加してノイズ規制に関する問題を検討しています。
もちろん日本からも参加していますので、将来的にCISPRの値が採用される事となるでしょう。

しかしながら、日本では2012年に行われたFIT(全量買い取り制度)が業界を動かしてしまった為、法整備が無いままソーラー発電のみが急速に普及してしまいました。
これから法規制するにしても、既存の設備をどう扱うかという問題(順番が逆なのです)が浮上するでしょう。
ゆえに、CISPRの基準を法的に取り込むには大きな時間が必要と思われます。

日本における機器メーカーの対応状況

パワコンがノイズを発し、それが法律の範囲内であっても無線設備に障害を与える事をメーカーは知っています。しかし、国内では合法であり一番問題になりやすいアマチュア無線の局数を考えても、全ての機器に大規模な対策を最初から入れておくことはコストの面で対応できません。
よって、問題が起きないようにする事と、問題が起きたときの対応の2面で考えているようです。

問題が起きないようにする

多くのメーカーは、次の文言をカタログや施工マニュアルに記載しています。

  • 機器が発する電波雑音により通信障害を起こす可能性がありますので、アママチュア無線やその他無線設備から100m以内には設置しないでください。
  • アマチュア無線等のアンテナの近くには設置しないでください。
  • アマチュア無線等のアンテナが近くにある場合は、購入前にメーカーにご相談ください。

このように、おおむね100m以内の距離では障害を起こす、100m以上離れていればほぼ問題は起きないと認識しているようです。ただし、規模によらずです。
しかし、多くの施工業者はこの案内を読んでいないか無視して居るようで、全国各地でここに挙げるようなトラブルが発生しています。

当方含めいくつかの事例では、設備の完成後に問題が発生し、工事した設備を永久停止せざるを得ない、撤去するしか無いという事が起きています。数100万かけた設備が、マニュアルを読まなかったために1円も売電出来ない状態で捨てるしか無くなるわけです。
メーカーは先手を打って記載して居ますから、後になって問題が起きても通常は助けてくれません。

ノイズ対策の基本

あくまでも基本事項です。

  • アンテナとパワコンの位置関係は、可能な限り遠ざける
    ノイズ源との距離を離すのが一番効きます。
  • パワコンの直近にノイズフィルターを挿入する
    PVパネル側と電力系統側の両方に入れます。それぞれに特性の違うフィルターを使います。TDKのフィルターを使う例が多いです。
    このノイズフィルターとパワコンの間のケーブルから漏洩するノイズが最大となるので、極力短く配線するようにします。
  • ノイズフィルターを納めた箱(金属製)からアースに落とす
    この箱がノイズアースの基点になります。
    ここから直下に高周波アースに接続します。アースケーブルは出来るだけ太いもの(5.5Q以上を推奨)で繋ぎます。
  • 高周波アースを打つ
    通常の安全アース(D種)では効きません。
    例えば1mのアース棒を50cm間隔でなるべく広い範囲に数本打込み、それらを数珠つなぎではなく1まとめにして地面からアース基点まで立ち上げます。
    ここには最大のノイズ電流が流れますから、アースラインからの輻射には十便注意が必要です。
    もちろん、このケーブルにもシールド処理をします。
  • 全てのケーブルは金属配管に通し、等電位にする
    コンジットパイプやプリカチューブを使い、パイプの継ぎ目はジャンパー処理して等電位にする必要があります。計装の施工では定番のシールド処理です。

以上の処理で、漏洩ノイズはおおむね20〜30dB低減できます。
これ以上は距離を離すしか手はありません。10mを30mと3倍にしたら約10dB落ちます。

実例

我が家の場合(その1)

  • シャープ 5KWシステム。
  • 1.9〜50MHz帯全域でS9のノイズが発生。
  • 目標とするノイズ低減レベルは30dBとした。ガマン限界。
  • パワコンの移設(10m→30m)
  • フィルター増設
  • 配管シールド&等電位アース処理
  • アース処理
  • 30dBの低減効果が得られた
  • 交信局が居ない状態で、Sメーターは触れない範囲だがノイズの存在は判る

我が家の場合(その2)

  • その1に対して勝手に増設された
  • オムロン 5KWシステムが3つ
  • 14MHz帯で常にS9のノイズ、長周期で+20dB越えのノイズ
  • メーカー検討で、目標とするノイズ低減は72dBと算出
  • メーカーは対策を断念
    現在の技術では無理とのレポートを貰った(オムロンの品質管理部門)
  • 運転停止→設備撤去

神奈川県の事例

  • 戸建てで開局
  • 我が家と同様に隣接アパート(同じ企業)からの障害を懸念
  • 施工中(障害の事実はまだ出ていない)
  • 私の事例を根拠に、アパートオーナーはメーカーとの相談の結果、施工を断念した

宮城県の事例

  • 戸建てで開局
  • 新築の隣家
  • SHARP製 4KW程度
  • 50MHz帯全域にS5〜6のノイズ
  • メーカーの回答は、「費用がかかるし効果も約束できない」
  • 施工業者は知らずに設置(ノイズの知識無し)
  • 今後のことをオーナーと相談中だが1年以上進展なし(おそらく費用負担の問題だろう)

大阪府での事例

  • マンション最上階で開局
  • 隣接で建設中のマンション(47世帯)
  • 屋上に共同でパネルを設置、各世帯に1.2KWパワコンを設置(一般個別契約になる)
    この手法だと低圧接続になり、50KWを越える設備の接続(売電)拒否の適用外になります。
  • 施工中
  • メーカーで事前対策を検討中(フィルターとシールド)

秋田県の事例

  • 戸建てで開局
  • 2件先の家が立て替えと同時に設置
  • おそらく稼働前
  • 今後のアクションを私と相談中

千葉県の事例

  • 戸建てで開局
  • 100m先に老人ホームを建設中(太陽光発電が乗ることは確定)
  • 50KW級でシステムはシャープ製
  • 施工業者はノイズの知識が無い
  • メーカーに聞いて貰ったところ、中波付近は半径500m程度に影響を出すだろうが、ノイズ対策は今のところ考えていないとの事
  • 稼働後のノイズが心配

長野県の事例

  • 戸建てで開局
  • 60m先の工場跡地にメガソーラーを建設中(2MW程度)
  • ノイズを懸念して相談するも進展なし
  • 相談先を探すもJARLもアテに出来ず途方に暮れたところで私の存在を知った

JARLとの関係

JARLの元技研(技研は法人格変更と同時に解散しました)の方と繋がりを持っています。
この方は今でもJARLに居て、CISPR等にも参加しているそうです。
この方へのインタビューでは次の事実を得ています。(JARL NEWSにも一部掲載されています)

  • JARLから太陽光発電システムのメーカー各社へお願いのレターを出した
    アマチュア無線への障害に対して、対策への協力とノイズ低減の技術開発のお願いです。
  • CISPRへの参加
    定期会議へ参加しているとのことです
  • PLCの問題も別の方向で再浮上しているとのこと
  • 非接触充電への懸念
    EVを駐車場で非接触充電する実験が行われようとしているので注視しているとの事です。
  • JARLは技術系の人がほとんど居ないので、手が空かないのが最大の問題
    ノイズの問題は認識していて強い懸念を持っているが、動ける手が足りないのが事実との事。

業界動向

  • 2012年に始まったFITですが、2014年夏に送電網の受け入れ限界を超えて事実上破綻
    北海道、東北、四国、九州、沖縄の5地方。
    施工完了しても、電力会社の接続許可が下りない。(安定供給を確保できる容量を超えたため) ただし、小規模な一般家庭の屋根に設置する設備は除外されている。
  • 売電抑制が発生
    売る側が多く使う側を越えてしまったため、計画通りの売電が出来ていない事例が多発。
  • 総務省と経産省は、再生可能エネルギー設備等から発するノイズの問題を検討開始
    これらの規制をCISPR準拠とし、放射ノイズも含め法規制する方向で検討が始まりました。
    これは既存の設備にも適用する方針で、それらの改修に必要な費用は補助金を給付する方向で検討されているようです。
  • FITが破綻。買い取り制限を自由に出来るように法改正
    NHKニュース http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141216/k10014002471000.html
    私のBlog http://bwt.blog.so-net.ne.jp/2014-12-16

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Last-modified: 2016-11-28 (月) 01:16:13 (744d)